陽性適中率を上げたければ検査陽性に対して繰り返して検査すればよい

以下の記事のような「(有病率が小さければ)むやみに検査を拡大しても陽性適中率が低いので却って問題を引き起こす」という言説をしばしば見かけるが,これはちょっとミスリードで,(検査戦略は別の話として)とりあえず陽性適中率を上げたければ,検査陽性に対して繰り返して検査すればよい. jp.quora.com note.com bunshun.jp

各検査の感度を {p},特異度を {q} とし,各検査が独立ならば,1回目の検査陽性に対して追加でもう1回検査した場合,クロス集計表は次のようになる.

罹患あり 罹患なし
検査陽性 {p^{2}\equiv s_{e}} {(1-q)^{2}}
検査陰性 {1-p^{2}} {1-(1-q)^{2}\equiv s_{p}}

有病率を {r} とすれば陽性適中率 {\mathrm{PPV}} は,


  \begin{align}
    \mathrm{PPV}&=\frac{rs_{e}}{rs_{e}+(1-r)(1-s_{p})}\\
    &=\frac{rp^{2}}{rp^{2}+(1-r)(1-q)^{2}}
  \end{align}

なので,例として文春の記事の数値 {p=0.7, q=0.99, r=0.001} を使うと,{\mathrm{PPV}\approx 0.831} (83.1%) となる.2回とも検査陽性に対して,さらにもう1回検査を追加すれば,

罹患あり 罹患なし
検査陽性 {p^{3}} {(1-q)^{3}}
検査陰性 {1-p^{3}} {1-(1-q)^{3}}

となるので,先ほどの数値を使うと {\mathrm{PPV}\approx 0.997} (99.7%) である.

ちなみに検査陽性・検査陰性に関係なく3回検査して多数決で決める場合は,

罹患あり 罹患なし
検査陽性 {3p^{2}-2p^{3}} {1-3q^{2}+2q^{3}}
検査陰性 {1-3p^{2}+2p^{3}} {3q^{2}-2q^{3}}

となり,先ほどの数値例では {\mathrm{PPV}\approx 0.725} (72.5%) となる.